公正証書遺言

遺言書と形式

人は生きている間、権利義務の主体となります。遺言書が効力を生じるのは死後ですから、生きていない人が自分の意思で法律行為をすることは本来はないはずなのですが、特別に「私的自治の原則」を死亡後にまで拡張するのが遺言書です。

そこで遺言書の内容が「真意」によるものであることを明確にするために、遺言書の成立要件が厳格であるといわれています。内容はもちろん重要ですが、それ以前に、「書き方・形式・作成のルール」が重要です。

日常生活では、少し形式からはずれたからといって、完全に無効・無意味にはしないのが「良識」「大人の判断」でしょう。しかし、遺言書では「だいたい言わんとしていることはわかるから、まさか無効ではないだろう。」では、済まされないのが原則です。書き方が規則どおりでないと、本当に無効になります。

遺産分割協議相続人たちが、「この遺言書は法的には無効だが、書いた人の気持を汲んで、だいたいそのとおりにしよう。」というのはかまいませんが、遺言書にきちんと書いておかなければ実現できない事項もありますから、やはり正しく作成しましょう。

相続人等の遺言の仕方(遺言書の書き方)には数種類あって、それぞれにルールが異なります。遺言書は自分でかなり自由な内容にできますから、大きな勘違いをしたり、年齢や病気のせいで法律や事実関係を判断できない人が書くことがあっては、迷惑する人が大勢でてしまいます。そういうことを避けるためにも、遺言書の書き方を厳密にしてあると思った方がよいかもしれません。

公証人の作る遺言書

公正証書遺言は公証役場で公証人が作成する遺言書です。わざわざ行政書士に相談して、公証人と連絡してもらうのでは二度手間なので、最初から本人が公証役場へ行って相談すればよいのだろう、と思う方もおられます。

公証人は公正証書遺言を作成しますが、遺言書の適法性について証明・認証するのが仕事ですから、「こういう内容で作成してください」と希望し、それが適法であれば作成してくれるでしょう。

そのような遺言書を作成するにいたった経緯まで公証人に説明しななければならないというものでもありません。また、公証人は中立ですから、最初に公証人役場に来た人に「こう書かないと、あなたが損をしますよ。」というようなアドバイスはしないはずです。こういう場合はどうなるのかと質問をすれば答えてくれると思います。多少、公証人によって扱いが違うかもしれません。

よく、「自筆証書遺言は信頼されないが、公正証書遺言なら確実である」と勘違いされます。
実際は、自筆証書遺言でも公正証書遺言でも、形式・内容に問題がないかぎり、法的効力は同じです。公正証書遺言でも

というようなことまで公証人は調査しきれませんし、公証人が

  • 遺言をする能力の有無

を最終判断するわけでもありませんから、遺産分割協議でそれらのことが問題になれば、訴訟もあり得ます。実際に審判も訴訟もあります。
ただし大きなメリットは、

  • 遺言書の文字が本人のものではない。(本人が書いたのではない。)

と言われる心配がないことです。公正証書遺言(遺言公正証書)は、公証人が作成してくれますから、遺言者本人が書く必要がありません。

彩行政書士事務所で、遺言書相続の相談を伺っていると、すでに数年前に作成したという公正証書の遺言書(遺言公正証書)を出して、「この遺言書ですと、私が亡くなった後、△△△になりますか?」と相談されることがありますが、ご本人のお考えと、遺言書に書かれていることがかなり違っていることがあります。
この遺言書だと○○○になりますよ、とアドバイスすると驚かれます。なぜ、そのような遺言書ができてしまったのでしょうか。はっきりはわかりませんが、事情の検討が足りなかったのではないでしょうか。あるいは作成時と現在ではお考えが変わったのかもしれません。

行政書士と遺言書

遺言書は形式にきちんと則っていること、書いてある内容が法的に有効でなければならないことはもちろんですが、行政書士は、

  • 遺言者が遺言書を作成したい理由
  • 遺言者をめぐる周囲の事情
  • 遺言者の意向

などを総合して、遺言書の起案として提案します。その上で、公正証書遺言とすることをお勧めするのが通常です。

行政書士は、公正証書遺言でも自筆証書遺言でも、どうしてその内容の遺言書を作成したいのか相談していただいて、なるべくそのとおりになるような遺言書の原案を作成することが大切です。

公正証書遺言は形式の点ではかなり信頼できるので、行政書士と遺言書の内容を検討した上で、公証人に特別な書式で作成してもらうのが最良です。

公正証書遺言ですと、原本・正本・謄本が作成され、原本は公証役場で保管しますから、紛失・偽造・変造の心配はないと考えてよいと思います。何を書いたかが明らかです。手紙を紙に書いて普通郵便で送るのではなく、内容証明郵便として送付するのと似たような効果です。

きちんと自筆証書遺言を作成したのに、変造されたり、破棄されてしまったりということが意外とよくあります。そういうことはあまり耳にしないと思いますが、「オモテ沙汰」にならないケースが多いからのようです。

公正証書遺言作成にあたって

公証人の手数料は政令で決められていますが、相続する財産の額だけでなく、遺言書に登場する人物の数で手数料が変わったりするので、行政書士としては明確にお答えすることは避けています。

公正証書遺言をするときに、たいてい必要とされるのは

  • 印鑑証明書
  • 預貯金の通帳
  • 不動産の全部事項証明書(登記簿謄本)
  • 固定資産評価証明書(固定資産税・都市計画税の納税通知書)
  • 遺言書作成者と相続人の関係を示す戸籍謄本
  • 遺贈を受ける人の住民票等
  • 遺言の証人2名(行政書士が手配できます)

など、かなりたくさんのものです。これらを集めるのに何らかの障害があることがあります。あるいは、煩雑だから遺言公正証書の作成をあきらめる人も結構おられます。
自筆証書遺言でしたら、上記のものがほとんど必要ありません。ただし、ご自分で事実関係や内容を把握しておいてください。不明確なら取り寄せるなどして確認した方がよいでしょう。そのお手伝いも行政書士がいたします。

川崎、中原区の行政書士

川崎市中原区に本拠を置き、武蔵小杉・元住吉で面談しています。
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