成年後見

法律行為の代理人

社会生活をしている以上は、署名捺印などが必要な法律行為をするとがあるでしょう。未成年者の中には大人以上に優れた知識と判断力を持っている人がいますが、どちらかといえば未熟な人が多いので、未成年者であればとりあえず保護しようと決めてあります。だから、何かするときに親権者の同意とか署名が必要になります。

逆に、高齢になるなどして判断力が低下して自分では適切な判断ができなければどうするでしょうか。契約をきちんとしなければ施設に入所したりすることもできません。そのような場合、後見人に代理してもらいます。

成年後見

以前、禁治産とよばれていた制度を見直したものです。サムライがいた時代の話ですが、お殿様とか戸主の判断があまりにひどい場合に、家臣や一族などの協議で、隠居させる(押し込める・表に出さない)制度がありました。これは、周囲に人に迷惑をかけることを防止するためでした。

家制度がなくなった現在、財産は個人のものですから、それをどう使っても本人の自由なはずです。子のために残しておかなければならないということはありません。浪費して、全財産を使い果たしても自己責任です。

禁治産という制度は、どちらかというと家の財産を適切に管理して家や家族を守るためだったので、今度は、本人の財産を本人のために守るという制度として、成年後見制度ができました。
認知症や加齢、障がいなどのため、判断能力が不十分になった人を支援するもので、支援される人を被後見人といい、支援する人を後見人といいます。

家庭裁判所の管理のもとで

法律行為は自己責任が原則ですが、それを人に任せるのですから後見人は重要な役割をします。後見人を選ぶ過程も、後見人の権利・義務の履行も厳格でなければなりません。そこで、裁判所の関与があります。

財産の保護

身上監護にも関わりがありますが、財産保護が中心です。悪徳商法から守ったり、わからずに不当な契約を結んだときには取り消したり、介護の契約などを自分でできない場合に代理して契約するなどします。

任意後見

自分の判断能力が低下したときのためにあらかじめ財産管理などを任せる人を選んでおくのを任意後見制度といいます。任意後見制度を利用するには、公正証書によって契約を結ばなければなりません。

法定後見

任意後見に対して、

  • 通常の判断がほとんどできない場合の後見
  • 重要な財産だけを管理してもらう保佐
  • 保佐よりももっと判断力がある場合の補助
    という法定後見制度があります。後見人等は家庭裁判所が選任して、法務局に登記されます。戸籍には登記されません。

家庭裁判所に申立て

配偶者や4親等内の親族などが家庭裁判所に申立てることができます。本人の戸籍や医師の鑑定書が必要ですが、誰を後見人にしたいのか親族間で意見をまとめておくことが重要です。それなりの費用が必要ですが、自治体が申立費用や後見人の報酬を補助してくれる制度もあります。生活保護を受けている人でも大丈夫でしょう。

後見人の役目

主として被後見人の財産を守り、契約を代理したりするので、後見人は毎年、状況を裁判所に報告しなければなりませんが、裁判所が決める正当な額の報酬を受け取れます。

相続時のトラブル防止のために

年老いて、判断能力のなくなった父や母の面倒を特定の人がみている場合に、その人が父や母の財産を勝手に費消して(使い込んで)いるのではないかというトラブル相続時に発生することがあります。それを防止するために使われることもあります。

被後見人は遺言書の作成もできません。もし、判断力が低下してきたということなら、早いうちに遺言書を作成しましょう。そもそも、明日、交通事故で命を失う可能性は誰でもあるのですから、遺言書を遺す必要のある人は、とにかく作成しておくべきでしょう。

相続人の中に被後見人がいる場合には、後見人が遺産分割協議などに入って相続手続きを進めます。全体として、手続き上あまり融通は利かないことになると思います。