死後のデジタルデータ

遺言書を作成するとか、終活ノートを作るとか、いつか必ず起こることに備えておくべきだとよく言われます。

重要な財産があるとか、自分亡き後、相続人たちの間でトラブルが起きることが予想される場合には尚更それを避ける工夫をなさるでしょう。

自分の相続でトラブルは起きないと思っている人の場合でも、実際に遺産分割手続きが始まってみると争いになることはよくあります。争いといっても、大きなものから小さなものまでいろいろあります。

デジタルデータ

今後の相続を考えると、ほとんどの人がインターネット上の何らかの会員になっているでしょうし、定期購読などの契約をしていることが予想されます。自分が突然亡くなってしまったときは、インターネット上の契約関係やデジタルデータはどうなるでしょうか。

放っておいても?

インターネット上で会員などになっている場合、購入手続きなどしなければ何ごとも起きないものもあります。定期的に引き落とされる会費がある場合などでも、多くのものが翌月分・翌年分を先払い(自動引き落としなど)する制度になっていて、亡くなった人の口座は凍結されたり、解約されたりするでしょうから、死亡後は引き落とすことができず、自動的に解約されて特に問題にはならないことが多いと思います。ただし、有料サービスの継続課金がある場合、契約者本人が死亡したらどうなるのかは多少心配ではあります。

データの扱い方

たいていの人がパソコンやスマートフォンを所有していますから、ケースによりますが、それらを廃棄する前に念のため内容を確認した方がよいかもしれません。何か重要な記録がある可能性もあります。

パソコンやスマホは財物であり遺産となりますが、記録装置上のデータは有体物ではないため財産ではありません。ですから相続財産の対象ではありません。通常、記録装置上のデータをパソコンやスマホ本体ごと廃棄することは法的には問題ありません。(ただ、しばらくはそのまま保管することをお勧めします。)

上に紹介したように、インターネット上で会員などになっていて、定期的に料金を支払っていたような場合の会員権は、おそらく一身専属のものであって相続の対象ではないことがほとんどです。ただ、MHKの料金は、自動解約されないだけでなく、契約者ではない相続人や親族から取立てる例(2018年頃の情報)があるそうです。

パソコン等に、自分だけの秘密がある場合はどうするのかが問題ですが、それはパソコン内のデータにかぎらず、金庫内や本棚の奥にしまっておいたものも同様です。むしろ、パソコン内であればロックを掛けることも可能です。

 

 

必要なデータ?

パソコン内のデータで必要なのは、

  •  仕事関係の資料
  •  ホームページ等
  •  インターネットで取引きする金融機関

ではないでしょうか。

  • 仕事関係の資料:引き継ぎが必要ではないか
  • ホームページ等:不正使用などに使われないか
  • インターネットで取引きする金融機関:財産を預けてあるかも

特に、「インターネット上で取引きする金融機関」に財産がある場合には、財産が行方不明というか、財産があることに相続人が気づかないことがありそうです。

インターネットで取引きする金融機関

遺言書作成のとき、金融機関に財産があれば財産目録(相続財産目録)に口座番号等を記載しておくのが普通ですが、銀行による相続の説明はかなり特殊なことがありますからご注意ください。

しかし、多くの場合、ネット上の金融機関にあるお金等が自分の財産の重要な一部であることはあまりなくて、ちょっとしたお金を動かすのに便利だから使っているだけということも多いようです。相続手続きから洩れたり、ウヤムヤになってしまうのかもしれません。

こういう場合の時効は5年あるいは10年ですが、普通は時効期間を過ぎても名義変更等をしてもらえるようです。これについてはネット情報ですが、2点だけ紹介しておきます。

 

://www.zenginkyo.or.jp › abstract › affiliate › kinpo › kinpo2008_2_2

(httpsを付けてご参照ください。)

 

「第1章 預金債権の消滅時効について – 全国銀行協会」

銀行関係者によれば、時効が完成していても、記録上預金を確認できる場合には、一般に消滅時効を援用しないと言われており、・・・

 

預金が確認できる以上は消滅時効が完成していても時効を援用しないのは、「慣行」であるという言い方がされることがある。たとえば、小笠原浄二「消滅時効の援用」手形研究490号38頁(1994年)。

また、裁判の中でも、このような銀行の対応に言及されることがある。たとえば、東京高判昭和58年2月28日判時1073-73は、預金者が時効完成後に預金払戻しを求めた事件において、「銀行が預金獲得上の配慮ないし対外的な信用保持の見地から、消滅時効期間経過後であっても預金債務について時効を援用せず、その払戻請求に応ずるのが一般的取扱いである」と述べている。

比較的最近のことで、預けたお金をあきらめなければならいことがありました。「時効だから渡さない。」というのではなく、

「古いことなので、調査したが不明。」

という説明を受けました。金融機関が時効取得を主張するのであれば、時効の援用という手続きが必要です。つまり「確かにお金は預かっているが、何の変動もなく消滅時効期間が経過したので、もうあなたに返しません。」と宣言する必要があります。印象は悪いでしょう。

しかし、古いことなので調査したがわからないと言われてしまうとかなり対応が困難でしょう。

頼りになるのは紙

インターネットで取引きする金融機関については、金融機関名・口座番号などを「紙」に書いて、通帳や保険契約書などと一緒にしておくとよいでしょう。しかし、こういうことをなさっている人はあまり多くないようです。

遺言書を作成する人は、遺言書のどこかに記載して構いません。そのようなメモは遺言の法的効力には関係なくても、記載してはいけないということもありません。財産目録に入れても支障はないでしょうし、付言事項に入れても差し支えありません。相続人にとっては役に立つと思います。

「ペーパーレス」という言葉はありますが、やはり役に立つのは「紙」だということになりそうです。

もし、ホームページを持っていたり、インターネット上で会員になっていて、退会や解約手続きなどが必要なら相続人や遺言執行者ができるでしょう。その場合の費用は相続財産から支弁できるように遺言書で指示しておけば完璧でしょう。あまり必要性を感じませんが、念のためという程度です。

専門家に依頼

パソコン・スマホ内のデータ整理・処分を専門業者などに依頼することも可能だと思いますが、非常に手間がかかるので費用はかなり高額になりそうです。

故人のパソコンを起動する際のログインは専門業者に依頼すれば可能なことが多いそうですが、スマートフォンは難しいそうです。

相続手続きを依頼された場合、通帳や保険契約書などがどこにあるかわからない場合があります。

一箇所にきちんと整理していなくても、「この引き出し」とか「この箱」「この袋の中」というように、大切な物を放り込んでおいてもらえれば大抵は何とかなります。

固定資産税の納付通知書などもそれらと一緒に放り込んでおいていただければ手続きはやりやすいです。

川崎市中原区の行政書士

相続手続きは時間も手間もかかることが多いです。共同相続人がいる(相続人がひとりではない)場合には、遺産分割協議をしたり、全員で手続きすることがほとんどなので、人間関係にも気を遣うことが必要でしょう。

  • 意見は書面で知らせる。
  • 重要なことは第三者(専門家等)から言ってもらう。
  • 登記手続きなどは省略せずに行なう。

以上のようにすると無難だと思います。

川崎市中原区を本拠としていますが、東急東横線のおかげで横浜市(港北区など)や東京都(大田区・世田谷区・目黒区・品川区・渋谷区など)の川崎寄りの地域の方には便利ですし、京王線や小田急線、横須賀線などをご利用の方にもご依頼いただいています。

多くのことが全国対応していますが、微妙な問題が含まれるときは面談した方がよい結果が得られるかもしれません。