葬儀費用

墓と祭祀主催者

相続手続き・遺産分割協議の前に、まず墓(祭具や墳墓)は相続財産ではないことを相続人全員で確認しておきましょう。これらを使って営利事業に使うわけではないので「財産」とは考えず、遺産分割協議の対象ではありません。

誰が祭祀主催者となるか、お墓を守っていくのは誰かということは遺産分割協議とは別の話だということはよく言われます。しかし、墓を守っていくにはかなりの費用がかかる場合もあります。事情によっては、遺産分割協議のときにお墓を守っていく費用も相談したほうがよいかもしれません。

 

誰がお墓を守っていくかは、

  • まず、被相続人が指定する。
  • 指定されていなければ、慣習による。
  • 慣習で明らかでなければ、家庭裁判所の調停・審判、

の順で決めます。

お墓を守る人(祭祀主催者)を指定するのは被相続人ですが、指定の仕方は

  • 遺言書
  • 口頭
  • 書面
  • 黙示

でできます。つまり、意思が伝われば方法はどうでもよいことになります。

 

祭祀主催者は、相続人・親族である必要はないし、ひとりでも複数でも、姓が異なってもかまいません。

祭祀主催者に指定されると辞退はできないようです。ただ、指定された人にはなんらの義務も生じないので、辞退できなくても実際には困らないと思います。そのようなことにならないように、あらかじめ了解してもらいましょう。

 

上にも書きましtが、お墓を守るのに場合によってはかなり費用がかかるので、そういう場合は遺言書でその費用について配慮しておくことはできます。

葬式費用

どのような葬式にするかは、亡くなった人によって、あるいは葬式を主催する人によって、かなり違います。

葬儀は時代によっても地域によっても、そして個人によっても考え方が違うので、どうしたらよいかは個別に考えるしかありません。

「葬式の規模」を「自分の生きた人生の規模」と考える人もいます。人生の成功者は、葬式も盛大になる、という考え方でしょうか。戒名などにも思い入れのある人がいます。一方、散骨がよい(散骨でよい)という人も多いようですから、とにかく人によってさまざまです。遺言書で葬儀の方法を指定しておくこともできますが、これはあくまでも希望であって、法的拘束力はありません。

一般にいう葬儀費用とは、だいたい以下のものですが、相続財産から支出できると考えられます。

  • 通夜
  • 本葬費用
  • お布施
  • 戒名費用

以下のものは相続財産から差し引くことができないとされています。

  • 初七日や四十九日法要
  • 香典返戻費用
  • 墓地等で相続開始後に購入したもの

葬儀費用は、相続財産・遺産から支出するのではなく、葬式の主催者が負担するのですが、実務上、相続財産から控除できるといわれるようです。
そうしますと、いただいた香典は、まず葬式費用に充当し、それでも余った場合は葬式の主催者に帰属させることになるでしょう。

しかし、香典が遺族への援助や励ましの意味で贈られたなら、その趣旨どおり、遺族に帰属するはずです。遺産分割協議とは切り離して考えてよいようです。
実際には、香典がどういう趣旨で贈られたかはよくわかりませんから、遺族間で何となく処理している場合があります。

葬式費用は、相続税法上の控除もありますから、きちんと領収書等を整理しておかなければなりません。遺産相続遺産分割とは別にしておくべきものです。ただ、葬儀に関する諸費用で領収書が得られない場合があります。本来は「支払い」と「領収書の発行」が同時履行のはず(つまり、お金を渡すのと同時に領収書を受け取るもの)なのですが、領収書が手に入らないことがあります。遺産分割協議でのトラブルのもとになるかもしれません。(領収書については解決法があるようです。)

死後の名誉

「葬式の規模」を「自分の生きた人生の規模」と考え、「人生の成功者は、葬式も盛大になる」という考えの人がどのくらいおられるのかわかりませんが、きっとおられるでしょう。

ピラミッドは王の墓であり、偉大な王ほど大きなピラミッドを建設するという説があります(ありました?)が、同じ考え方でしょう。
真田昌幸・真田幸村の親子のように武士らしく死に場所を求めて後世に名を残すというのなら、墓よりも大切なものがあるのでしょうが、墓もそれなりのものができるでしょう。
このように、死後の名誉、生前の偉大さをずっと残したいという気持ちは、もしかすると人類に共通する感覚なのかと思ったりもします。(若い頃は気にしなかったけれども、ある年齢から気になり始める人もおられるでしょう。)

亡くなった人が、そのようにお考えなら、葬式の主催者はそれなりの配慮をすべきでしょうが、ただし、どのように行うか強制されることはないと思います。

家制度

日本の法律では「家制度」を廃止し、「個人」を重視することにしました。しかし、現実には家督相続とか、祖先への感謝や郷愁のような感覚を強く持っておられる方もいます。

家系図を作成したくなる人は、そういう気持ちなのかもしれません。墓参りも同じような気持ちからするのではないでしょうか。

葬式は亡くなった人の生前の意思を汲んで執り行なうとよいと思います。
費用にも関係しますし、どのような流儀で執り行なってよいのか、喪主や相続人がわからなくては困りますから、ご本人が生前に指示しておいてくれれば助かります。「終活」もよいかもしれません。遺言書に書いておくこともできます。