跡継ぎ遺贈など

遺言書による財産の移転

死亡時に遺言書がなければ、法定相続人が遺産分割協議をして財産の配分を決めるのが基本ですが、遺言書を作成しておけば、法定相続人の協議に任せるのではなく、遺言書で指定しておくことができます。

書きたいことを自由に書けばよいのですが、公序良俗に反するとか、違法だとか、内容に矛盾や事実誤認があれば、書いても役に立たないかもしれません。

「私が死亡したら、〇〇財産を妻に相続させる。その後、妻が死亡したら、その財産を長男に相続させる」という遺言書の場合、妻や長男、長男の他に兄弟姉妹などの関係人がその遺言書の内容に同意してそのとおりにしれくれるなら問題はありません。

しかし、この場合、遺言書を作成した人のお気持ちはわかりますが、法的には問題がありますので、その遺言書の内容に納得しない関係者・相続人がいれば、その遺言書のとおりにはいかないでしょう。

人の財産について指示はできない

まず、前半の「私が死亡したら、〇〇財産を妻に相続させる。」までは、自分の財産を妻に譲るのですから有効です。
後半の「その後、妻が死亡したら、○○財産を長男に相続させる」は、無効と考えられます。自分の財産が妻のものになった時点で、その財産の所有権は妻にありますから、その財産を妻がどのように処分するかは、妻が決めることです。

自分の財産の行く末

「私が死亡したら全財産を妻に譲るが、長男が18歳に達したときに、長男が当該財産を受け継ぐこととする。」という遺言書(跡継ぎ遺贈型遺言)はさらに複雑です。おそらく無効になると思われますが、たとえば「自分の自転車を1年間は後輩のA君が使用し、1年が過ぎたら、A君はその自転車をB君に譲りなさい。そのとき、B君はA君に5千円支払うこと。」と決めてもよさそうな気もします。同様に、そのような遺言書を作ってもよいと差し支えないかというと、これは問題です。このような遺言書にならないように気をつけましょう。

所有権・処分権

親から長男が家と広い庭を相続しました。そうすると長男が所有権者ですから、その不動産を処分することもできます。

長男と次男で、その庭の一部を次男が少なくとも数年の間、無料で使ってよいと約束したとします。

次男は、その土地を整備して、駐車場として貸し出し、賃料を得ようと考えた、という場合には問題があります。

次男が駐車場を作って、人に使わせることはできても、駐車場を借りた人は次男と「駐車場賃貸借契約」ができません。次男が自由に使ってよいことになっていても、自分が所有権者でない土地を使って商売(ここでは駐車場賃貸業)はできません。しかし、当事者全員がその事情を知った上で、信用に基づいて貸し借り等をしていてもそれは自由です。

遺言書で自分の財産の行き先を指定したくても、自分のものでないものについての指示は法的な効力がありません。

「私が死亡したら全財産を妻に譲るが、長男が18歳に達したときに、長男が当該財産を受け継ぐこととする」というトラブルの元になるような遺言書は作らないに越したことはありません。

きちんとした遺言書がなければ

彩行政書士事務所は、南武線と東横線の交差する武蔵小杉とその隣の元住吉を本拠にしている行政書士です。
遺言書も疑問点が多くなれば、訴訟に発展しかねません。それでは何のための遺言書かわかりませんから、遺言書を作成する理由、どのようにしたいか、どのように書くか、をご相談いただければ、お力になれると思います。

訴訟・裁判をするのですか

遺言書をめぐって訴訟になることもありますが、実際にはめったに訴訟になりません。費用・時間・労力を考えると、冷静に話し合う方が当事者全員にとってメリットが多いケースがほとんどだからです。また、企業ならともかく、個人で、まして、親子・兄弟姉妹で訴訟をすることは自慢になりません。大人が冷静に考えれば、裁判官の判断をいただかなくても、大抵は結論が出るものです。そして、その結論が揺らいだり、そもそも問題の発端が蒸し返されないように書面(協議書・示談書・合意書)にしておきましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください