遺言書

相続人に感謝される

学生の頃、受験の面接の模擬練習をしませんでしたか?
「尊敬する人は?」
と訊かれたら、
「はい。両親です!」
と答えた同級生がいました。
無難な答え方なのだそうです。

私が自分の親を尊敬していないということではないのです。正直なところ、私の父母は私にとっては唯一無二、かけがえのない存在ですが、世界一尊敬しているのかというとそういうわけではないと思います。親として敬うことと、師として仰ぐような尊敬する人物とは異なるでしょう。

自分が遺言書を遺して、子孫(相続人)から尊敬され感謝されるのかと考えたことはありませんか?
世の中に、子から尊敬される親はどのくらいいるのでしょうか。このような遺言書を遺すとはさすがである、と相続人から感心される人はどのくらいいるのでしょうか。

遺言書とはそのように感心され、感謝されるようなものであるべきだと思います。
しかし、かえって争いのもととなる遺言書があり、「いっそのこと遺言書はないほうがよかった。」という話もよく耳にします。

遺言書は作らない方がよい

遺言書は作らないほうがよい」というのは一面では正しいと思います。
しかしまた「遺言書はぜひ作成しておくべき」とも言えます。
さらに、自筆証書遺言ではなく公正証書にしておく「公正遺言証書(公正証書遺言)が絶対にお勧め」という場合もあります。

  • 相続人や後世の役に立たない遺言書なら、ないほうが相続人は幸せ。
  • 相続人遺産分割協議で困らないようにしてくれるなら、ぜひ遺言書を遺してください。
  • どのような内容の遺言書にしても、相続人に不満が残りそうなら、公正証書遺言を遺してください。
  • 公正証書遺言でも訴訟になることもあります。

遺言書は、本人(遺言者)の「最終意思」と言われたりもしますが、遺言書相続人や後世を思いやって作成するものであって、本人の最大の関心事とはかぎりません。

遺言書の効力は強いので、「良い遺言書」を作成するには、その家の(一族の)歴史と将来、主義や生き方まで反映させたいものです。ですから総合的な判断と細かな配慮が必要です。

こういうと時代錯誤のように思われるかもしれませんが、なかなか「教科書的」にはいきません。

遺言書

遺言書など書くのはまだ早い」
遺言書を書く理由がない」
遺言書を作っておけば、相続問題が起きない」
と考えておられませんか。ちょっと極端に言うと、すべて間違っているかもしれません。

財産は、たいてい均等に分けられません。

ご自分が年老いたとき、誰が療養看護をするのか。もう、一概に「長男のお嫁さん」という時代ではないかもしれません。
親の療養看護をしたくても、できない人もいるでしょう。

ご自分が亡くなってから、遺された配偶者はどのように生活してゆくのでしょうか。金銭、病気、日常生活・・・いろいろな問題があります。

お子さんも、「お子さん」とは呼びにくいほど「大人」になっておられることが多いのですが、病気や失業などで、将来に不安はありませんか。その場合、その子に特別に家を遺してあげるなど、特別の配慮をしなくて大丈夫ですか?

エンディングノート

エンディングノートと遺言書は別のものです。エンディングノートは、人生の終末期に起こりうる事態に備えて、自分の希望や考え方などを記しておくもののようです。

エンディングノートは書籍や文具として販売されているほか、自治体やNPOなどで無料配布されていることもあります。

法的効力の有無のため、エンディングノートでは役に立たないという方もおられますが、ご本人の作成したエンディングノートを家族・相続人親族・周囲の方々で尊重するのなら、作成しておくのもよいと私は思います。

記載する内容は、

  • 自分の財産・貴重品についての情報
  • 自分が寝たきりになったときの介護について
  • 自分が認知症になったときの後見人について
  • 現代医学では回復することのない病気になった場合の措置
  • 臓器提供・献体についての意思表示
  • 通夜・葬儀の通知をしてほしい人のリスト
  • 葬儀・埋葬等についての希望
  • 形見分けについての希望
  • 処分してもらいたいもののリスト
  • 相続についての希望
  • 家系図や自分史

などが多いようです。エンディングノートで、部分的に遺言書と同じ効力を持たせることも可能かと思いますが、法的効果はないと思っておいた方が無難でしょう。
相続人に自分の希望を伝えるだけでなく、法的に確かなものを作るのでしたら、遺言書です。

遺言書を書く・書かない

遺言書は全員が書かなければならないものではありませんし、我が国ではそれほど作成する習慣があるわけでもないと思います。
それは「家を継ぐ」という考え方が受け継がれていることが原因かもしれません。しかし、法律は個人主義が原則です。慣習(考え方・感じ方)と法律の不調和のために生じる問題もあるかと思います。

相続において、

  • 遺言書を書く必要がない
  • 遺言書を書いても書かなくても同じ
  • 遺言書のおかげで相続人に感謝される
  • 遺言書があるために相続人・親族が不和になる

など、いろいろなケースが考えられます。
もっとも避けたいのは、
遺言書があるために相続人親族が不和になる」
ことではないでしょうか。そのようなことを防止するため、また、
「不和は避けられなくとも、とにかく結論を出しておきたい」
なら、遺言書を作成すべきです。

体力が落ちて気力がなくなるとか、判断力が低下すると、その場の気分や、近くにいる人の意見に流されやすくなります。それは年をとると誰にでもあることで、仕方がありません。
ですから、元気で判断能力もあるうちに作成しておきましょう。

「まだ、遺言書など書かなくて大丈夫」と思ったときが、きちんとした遺言書作成のラストチャンスに近い時期なのかもしれません。

遺言書の種類

遺言書にはいくつかの種類がありますが、通常使われるものは次の3種類です。

  • 公正証書遺言 通常は、行政書士・公証人・証人が関与します。もっとも厳格とされている遺言書です。
  • 自筆証書遺言 自分ひとりでできるのですが、無効になったりしないように、行政書士等にご相談いただいた方が無難です。
  • 秘密証書遺言 通常は、行政書士・公証人・証人が関与します。「秘密・・・」という名称からもわかるように、内容を誰にも知られないようにしておくことができます。

それぞれ長所・短所がありますから、詳しくはそれぞれの解説ページをご参照ください。わかりにくい点があればご相談ください。

誰が相続人なのか

不幸にしてお子さんが亡くなっていると、代襲相続といって、お子さんのお子さん(つまり孫)が、亡くなったお子さんの代わりに相続します。お孫さんも亡くなっていれば、ひ孫へと権利が移りますが、権利関係がわかりにくくなります。相続人遺産分割協議や法律の規定通りに相続して、満足な結果になればよいのですが、不安はありませんか。ときどき、大きな勘違いをなさっている方がおられますのでお気をつけください。

 

離婚したことのある人は

離婚したかつての配偶者との間に、お子さんはおられませんか?
おそらく日頃の交流が少ないでしょうから、相続の時に「どうやってコンタクトしたらいいのか」「遺産分割協議をどうやってするのか」「相続割合をどのように提案したらよいか」と困ることが多いようです。

遺産相続とは、簡単に言いますと、お金の話ですから、なかなかはっきりとは言いにくいのです。遺言書で相続について相続人たちが納得できるように指定してあれば、相続人が嫌な思いをしなくて済みます。

また、遺言書は「最終意思」ですから、生前に伝えられなかったことを遺言書でしっかりと書きのこすことができます。

遺言書とは早期に書くもの

遺言書」とは、さまざまな場合を想定して、感情的にも法的にもきちんとした「指示」をしておくことができる制度です。
年老いて、判断力が衰えてきたり、文字が書けなくなってからでは遅いのです。

遺言書と遺書とは違いますから、早くからご検討ください。



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