相続人

廃除

あの人にだけは相続させたくない

法定相続分どおりに遺産分割するなら、相続する人の順番(順位)が決まっています。子、親、兄弟などの順番です。配偶者は常に相続人です。

もしかすると不良少年(少女)のまま大人になった子や「親不孝者」には相続させたくないとお考えの方もおられるかもしれません。

兄弟にあげないようにするには比較的容易ですが、たとえば、子にまったくあげないようにするのは簡単ではありません。

相続させない 遺言 中原区

廃除という制度

遺言による推定相続人の廃除といって、民法第893条に規定があります。遺言でなく自分が存命中に廃除する場合には、家庭裁判所に認めてもらわなければなりません。遺言書の場合にも家庭裁判所で認められなければなりません。

この場合、認められるための理由は、条文上は「親への虐待、重大な侮辱、著しい非行」ということになっていて、その具体的内容がわかりにくいのです。例としては、以下のようなものだといわれています。

  • 親の財産を勝手に売却した
  • 賭博を繰り返して、借金をつくり親に支払わせた
  • 無駄遣いをする、仕事をする気がない、異性問題の繰り返し、小さな犯罪の繰り返し、など
  • 5年以上の懲役など、重大な犯罪で有罪になった

生前に廃除したい場合には家庭裁判所に請求しますが、遺言で廃除する場合にも、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の申し立てをします。(「遺言執行者」というのは、場合によってはこのように結構大変な手続きを引き受けることになります。)

廃除と遺留分

一般的には、特定の子に財産は一切相続させないと遺言書にきちんと記しても、遺留分という定めがあって、この場合法定相続分の一定割合はその子が取得できるのです。「できの悪い子だから一切財産をあげたくない」「自分と仲が良くない」「特定の子だけに財産をあげたい」というような場合に遺留分が問題になるような遺言書を書くことが考えられます。

しかし、できの悪い子だから「教育のため懲らしめて、自分亡き後、真面目に生きてもらいたい」という意味を込めるのでしょうが、別の見方をすると、いくらできが悪いとはいえ、ご自分のもと(未成年の間は自分が親権者でした)で育った子であり、しかも、その子としては親の財産がある程度自分のものになるはずという期待もあります。できが悪いから放り出すのも一法でしょうが、「自分の子がそのように育った責任があるから面倒をみるべき」という考え方もあるので、その点は難しいところかもしれません。

代襲相続人の遺留分

相続欠格者・廃除された人・相続を放棄した人には遺留分はありませんが、相続欠格と廃除の場合には代襲相続が開始しますので、廃除された人に子(直系卑属)があれば、この子が遺留分権利者となります。

廃除の審判確定前に遺産を処分したら

遺言で廃除している場合、遺言執行者が遺言の効力開始後、遅滞なく裁判所に「廃除の請求」をします。この段階では、廃除が認められるかどうかわかりません。

その遺言を知らず、たとえば被相続人の子が当然自分のものになったと思って土地を売却したりすることもあるでしょう。

そして、その後、家庭裁判所の審判が確定して、その人が廃除されたとなると、被相続人の死亡時にさかのぼって廃除の効力が生じます。
ということは、その廃除された人の法律行為は無効です。

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廃除されたら代襲相続

相続人が廃除された場合、代襲相続が認められます。

相続放棄すると、代襲相続がないことと混同しがちですからお気を付けください。

兄弟姉妹の廃除と遺留分

自分の兄弟姉妹を廃除することはできません。兄弟姉妹には遺留分がありませんから、裁判所の手続きを通じて廃除の手続きをしなくても、財産の全部を遺贈すれば、兄弟姉妹に相続させないようにすることができるからです。

裁判所は公共のものなので、たとえば自分で遺言書を書くことで解決する問題を、わざわざ裁判所に持ち込むべきではないと考えるとよいでしょう。

廃除の取消し

相続人の意思に基づいて廃除がなされるのですから、被相続人が廃除された人の相続資格を回復させることもできます。

廃除の取消しは、生前であっても遺言であっても、家庭裁判所への申し立てが必要です。

ただし、廃除の取消しを行なわないとしても、生前であれば生前贈与が可能です。また、廃除者は受遺者になることができるので、遺言書で廃除者に財産を譲ることは可能です。

結局、家庭裁判所へ申し立てることなく、結果的には同じことができると言えるでしょう。しかし、何通もの遺言書があったり、内容を大きく変えたりすると、相続人の間で紛争や混乱の元になりがちです。廃除というのは余程のことと思われますので、家庭裁判所への申し立てなしに、簡易に結論だけつじつまを合わせるようなことをするのが妥当かどうか、十分検討なさるべきでしょう。

廃除の請求ができる人

相続人たちの間で、どう考えても「あの相続人は廃除に値する」、ということもあるでしょう。
たとえば「親はその人を大目に見ていたけれども、素行が悪いし親を虐待していた。誰が考えても明らかに廃除すべきだし、そうでないと、他の相続人に対して不公平だ」と思えるような場合があります。
しかし、その場合でも廃除できるのは被相続人だけです。

ということは、被相続人が勘違いして、ある人を廃除するという遺言書を書いてしまうとかなり厄介だということでもあります。
ですから、遺言書は判断力がしっかりしているうちに書くようお勧めしています。

もっとも、単に被相続人の意思表示(遺言書に書いた)だけでは足りず、家庭裁判所の審判が必要ですので、まったく理不尽に廃除されてしまう可能性は低いと思われます。