寄与分

相続人がひとりなら遺産分割の問題は生じませんが、2人以上いると遺産分割協議が必要です。法定相続人が2人以上いると、相続人たちを共同相続人とよびます。

共同相続人の間で、遺言書の作成、遺産分割協議遺留分の算定など、いろいろな場面で、特別受益生前贈与寄与分などが問題になります。

戦後の民法が大きく変わったことはよく知られていますが、寄与分の規定は昭和55年になってはじまったもの(昭和56年から適用)です。家督相続の頃は思いもよらなかったことでしょう。ただし、遺産分割協議(あるいは遺産分割のためにする審判)の場では以前から考慮されていたことです。

相続人の一人ひとりが公平に財産をもらうということになれば、その算定や協議が必要になることは当然ですが、まだ日本人の心の中から完全には家督相続がなくなっていない点や、核家族・老後の生活など、すべてが複雑に絡んで、一層むずかしくなっているのだと思います。

寄与分 中原区

寄与分とは

条文では

  • 1,共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
  • 2,前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
  • 3,寄与分は、被相続人相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
  • 4,第二項の請求は、第907条第2項の規定による請求があった場合又は第910条に規定する場合にすることができる。

と書かれています。正確に読み取るのは結構むずかしいです。誤解なさっている方が結構おられます。

相続人のうち、亡くなった人の「財産の維持・増加に特別の寄与」をしたことが重要です。

  • 亡くなった人が自営業で、その家業を手伝った相続人寄与分をもらうということが考えられます。
    農業などがよく例に出されますが、料理店でも建築業でも何でもよいでしょう。
    しかし、手伝った分を給料としてもらっていたのでは、寄与分を主張できません。おそらく近年では、親の家業を手伝っていれば給料をもらっているので、寄与分にあたるケースはあまりないでしょう。
  • 親の住居が古くなったので新築したが、すでに年老いていたので、相続人の誰かが親のために建築資金をかなり支出していたということがあります。これはよくあることかもしれません。
  • 親子であれば、病気などのときお互いに助け合うのが一般的です。もちろんいろいろと事情があるので、必ずしもそうはいきませんが、単純に法的に考えると「助け合う義務」があります。
    しかし、病気だったり、ひとりで生活できない親の面倒を、付き添い看護人のようにずっと世話をしていたということになると、寄与分が認められるかもしれません。
    親の財産を増加させてはいないでしょうが、付添人を雇って対価を支払えばかなりの費用がかかりますが、その費用を支払わずに、特定の子(相続人)が看護したのですから、財産を減らさずに済んだということです。
  • 上の例と似ていますが、特に親が病気でなくても、高齢ならもう仕事はしていないでしょう。その親を引き取って、長期にわたって衣食住の面倒を看た場合には、やはり財産の減少を防いでいる、あるいは親について費用を支出したといえます。程度によりますが、このような場合にも相続財産から寄与分が認められるかもしれません。

親の面倒を看る義務があるのは誰か、何親等までの人に義務があるのか、と法的に考えるのがいいか悪いかという問題はありますが、遺産分割協議がギクシャクしてくると、法的に考えざるを得ません。
夫婦間の同居・協力・扶助義務(民法752条)、直系血族・兄妹姉妹間の扶養義務(民法877条1項)、直系血族・同居親族の扶助義務(民法730条)などがあります。

戦後になって、「家制度」を廃止して「個人」を重んじることにしたのに、親や兄弟姉妹が困っていたら、まず国ではなく血縁の濃い者(結局、家族等)が面倒をみるのはおかしいという声もあります。

東横線 寄与分 中原区

法定相続人だけ

寄与分相続人だけしか主張できません。つまり

は、寄与分と関係ありません。こういう規定がそもそも不公平ではないか、というような議論もあります。

令和元年(2019年)7月1日からは、相続人の配偶者など(たとえば、亡くなった人の息子の妻)に「特別の寄与」が認められますので、不公平感が少しは改善されたといえるでしょう。少しは改善されされたものの、難しい点がありますので【特別の寄与】をご参照ください。

寄与分は何割なのか

寄与分として相続財産の何割くらいが妥当なのかということについては諸説あります。目安とか世間一般の相場が自分の遺産分割協議でどれほど役に立つのかというと、あまりあてにはできないでしょう。これは相続人のする遺産分割協議で決めることです。相続人の間でどうしても決まらなければ家事調停や家庭裁判所の審判で決定します。

遺産分割遺留分特別受益生前贈与寄与分など、相続開始後に話し合うことがたくさんあります。どうにもならなくなれば裁判所を利用するしかありませんが、裁判所にまで行かなくてよいように、被相続人相続人もあらかじめ準備をしておくとよいと思います。遺言書の作成などはその代表でしょう。保険金の利用などもあると思います。