公正証書遺言とは別に自筆遺言をする

婚外子の相続

子供が数人いる場合、法定相続分は同じなのが原則ですが、「法定相続分は同じでも相続分を変更したい」場合と、「法定相続分が異なる」場合があります。

たとえば、
甲さんには妹である乙さんがいて、
甲・乙の父はAさん、母はBさんとします。
Aさんは妻でないCさんとの間に、丙という子がいます。
AとCは入籍もしておらず、法的には他人です。何も手続きをしなければAと丙も他人です。

C − A == B
│     │
│    ┌──┐
丙    乙  甲

そこで、Aは丙を認知しました。
丙はAの婚外子です。非嫡出子ともいいます。
父であるAが死亡しました。
Aの法定相続人と、各相続人相続分はどうなるでしょうか。

まず、Aの妻は2分の1です。
残りの2分の1を子どもたち全員で分けます。
丙は婚外子なので、以前は甲・乙の半分の相続割合となりましたが、平成25年12月11日以降は同等です。

(ただし、甲・乙・丙はAの子ですが、常に同等の法定相続分というわけではありませんのでご注意ください。)

亡くなった人からみて、子であることに変わりはないので、相続分も変わらないことにしたようですが、この場合、子供たちの間で、家族・兄弟姉妹という意識が薄いことが考えられます。
確かに「子は子」なのですが、その後の家庭生活が異なるケースが多く、被相続人との生活が異なって、関係の密度(濃さ)が異なる可能性があります。

法定相続分が異なるとしても、相続人の協議で変更することも可能です。

法定相続分が同じでも、実際には差をつけたい場合

「親からすれば、子供たちは皆かわいいものである。」といわれます。ある程度はそうだろうと思いますが、すべての子が『等しく』かわいいかどうかはわかりません。

可愛い子とそうでない子、気の合うこと合わない子、いろいろな事情で将来の生活を心配してあげたくなる子と自立して生活できる子など、違いがあることもよくあります。

婚外子などで、生れた頃にほんの少し会ったことがあるだけで、その後は一度も会わず、その子は葬儀にも参列しない(親の死亡を知らない)というケースも多いです。

その他には、子供が海外生活をしていて何十年も親と会っていないこともあります。この場合、親が病気やケガのときに世話をしていませんし、老後の介護などもしてなかったという事情があるかもしれません。

そうしますと、法定相続分は同じでも、実際の相続分には差をつけたいということもあるでしょう。

場合によっては相続(遺産分割協議)の際に、子供たちの間で「わだかまり」があるかもしれませんので、たとえば遺言書で、なるべくそのための「手当」をしておくとよいでしょう。

公正証書遺言の他に「自筆証書遺言」を作る

公正証書遺言は権威があります。具体的には、相続開始後の相続手続きで、「この遺言書は誰かが無理に、あるいはごまかして書かせたのではないか。」と言われる心配がほとんどありません。たとえそのような主張をされても、おそらく無視して構いません。

ただし、公正証書遺言は作成時にいくつかの書類が必要になります。事情があって、生前に各種の書類を集めることができず公正証書遺言の作成をあきらめる人もいます。

一方、自筆証書遺言なら作成時に書類はほとんど必要ありませんが、

  • 相続開始後、裁判所で検認という手続きが必要である。(裁判をするわけではないので、単純な事務手続きです。)
  • 自筆証書遺言では、誰かが無理やり、あるいはだましたり、頼み込んだりして書かせたのではないかと疑われるかもしれない。
  • 自筆証書遺言作成に際して、強要される・だまされる・頼まれる等のことはなくても、身近な人の心情を重んじたために、不公平な内容だと非難される可能性は高い。

というような心配はあります。

ですから遺言書は、法的なことを淡々と記せばよいのではなく、遺言者の心遣いが伝わるものにするとよいと思います。そのために、手紙のような、自叙伝のような自筆証書遺言もあるとよいと思います。

遺言書は後から作成したものが優先されますが、内容的に矛盾しないかぎり、古い遺言書も有効です。公正遺言証書とは別に、自筆証書遺言も作成しておくとよい場合があります。

実際、公正遺言証書で法的なことはしっかりしていても、相続人である子供たちが仲違い(なかたがい)しないかと心配される親御さんは少なくありません。私がその内容をうかがっているうち、相談者さんは泣きながらお話していることもよくあります。それだけ自分亡き後の争族(相続争い)を避けたいのでしょう。相続争いの後は、不仲が続き、交流断絶となって、お互いの葬儀にも参列しなくなることもよくあります。

相続分を変更(指定)して多めに相続することになる子が、他の兄弟姉妹たちから非難されることが心配ですし、少なく相続する子が「自分は親から好かれていなかった」と感じるようなことは避けなければなりません。そこで、「心情」を伝えることが大切です。そのような遺言書を作成するお手伝いをいたします。

川崎市中原区 遺言相談の行政書士

行政書士は「行政」という名称が付いていますが、個人的な権利や義務に関する相談・書面作成も行います。川崎市中原区に本拠を置く彩行政書士事務所は、個人的な権利義務に関する書面作成を中心業務としています。

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