相続の基本事項
人が亡くなったら、その人の財産はどうすべきでしょうか。お金持ちの子は生まれながらにしてお金持ちでよいとはいわないとしても、ある程度、「お金持ちの子はお金持ち」なのです。その程度を決めるのは国(国民)です。
「長男も次男も同じ」「男も女も同じ」が建前ですから、遺産相続で問題なのは、相続財産を相続人がどのようにして公平に分けるかということですが、誰がどれだけ相続するかは、亡くなる人が生前に遺言書で定めておくことができます。
といっても、家督相続の習慣や考え方が残っているせいか、遺言書はトラブルが予想されたり、特別な事情のある人だけが書いておくものだと思っている人が多いでしょう。
財産は、法定相続人が相続するけれども、その相続分を変更したり、相続人以外の人に故人の遺志で譲るという、ある程度の変更が可能なだけである、という説もあります。
法定相続分を「常識的な目安として」適用しようという人も多いと思います。これにしたがっておけばよいと考えているかもしれませんが、相続財産は、相続分にしたがって、明確に分けることができないのが普通です。ほかのページに【人生における1千万円】として書き込みましたように、相続財産は完全に公平に分けられないことが多いので、仮に厳密に計算できたとしても、実際に相続する額には500万とか1千万とかの「誤差」が生じても不思議ではありません。もちろん遺産の規模によっては「2千万」「3千万」ということもあるでしょう。
親子・兄弟姉妹には長い歴史がありますから、感情的なことも考慮すると、やはり相続・遺産分割はには困難がともなうと思います。特に、兄弟姉妹が問題でしょう。先妻との子・後妻との子、あるいは先妻の子と後妻との間で問題が生じるかもしれません。
「揉める」「問題になる」「トラブル」「争い」という言葉が使われたとしても、必ずしも法的な争い(法律で勝負しているの)ではなく、遺産分割協議が難航しているだけの場合が多いと思います。ほとんどの場合「調整」が必要で、これは裁判所にしてもらうようなものではありません。
元気なうちに遺言書を
遺言書は形式が重要です。法の定めた形式に外れていると無効になります。形式については【自筆証書遺言】をご参照ください。形式を備えていれば、次は内容です。「最終意思」の実現といわれ、自分の最終判断を書いておくものです。
遺言書は、いつか自分が衰えて、人生の最後の時期になってから書けばよいというわけではありません。誰でも、もしかすると明日、交通事故に遭うかもしれないのです。
体力が落ちて気力も衰えるかもしれません。気力が衰えると、公正な判断、人々の思惑も見抜けなくなります。また、便箋数枚の遺言書を自筆で全部書くのはかなりの体力を要します。遺言書は早く書いておく方がよいでしょう。
特に書いておくべきことが思いつかない人もおられるでしょうが、離婚経験のある方で、お子さんが(前妻の子・後妻の子・異母兄弟姉妹などが)いる場合には、遺言書を書いておいた方がよいと思います。
遺産分割協議
遺産分割協議と聞いてすぐ気になるのは、「遺言書はあるのか」ということです。相続財産は、
- 有効な遺言書があれば、遺言書の内容にしたがって相続します。
- 遺言書がなければ、相続人の遺産分割協議で決めます。
- 有効な遺言書があっても、相続人全員の同意で、遺言書とは違った相続をする場合もあります。
- 遺産分割協議が成立しなければ、調停手続きをします。
- 調停が不調であれば、審判手続きによります。
裁判所を利用して、結局、相続人がみんな笑顔で終わったと聞いたことがありませんので、少々気に入らなくても、遺産分割協議で決めることをお勧めします。裁判で決めなくても、話し合うつもりがあるかぎり、なんとかなると思います。
公平な遺産分割
法定相続分にしたがって遺産分割すれば公平なようですが、土地や建物などを「山分け」にするのは困難です。共有という方法もありますが、いつまでも共有しているわけにもいかないことが多く、法律でも共有状態は好ましくないとされているといえます。相続した不動産を利用して、商売を始めようなどという場合にはお気をつけください。
そういう事態のために、あらかじめ、誰がどの不動産を取得するのかを指示して、またそのように分ける理由も付記しておくと、相続した人たちが、亡くなった人の心情を理解してくれるでしょう。そのように分けるほうがよいと考えた理由を記載した部分のことを遺言の付言事項といいます。遺産分割の指定の理由を明示しておけば、遺言者の考えを汲んだ上で、相続人たちの事情に応じて、相続人同士で変更することもありえます。これも遺言書の書き方や遺産分割協議の重要な点です。
不公平な遺言書
遺言書で相続人に公平に分けられるとは限りません。気の合う子にたくさんあげて、気の合わない子には少ししかあげない遺言書もあります。もっとも極端なのは、相続人であってもその人には何もあげないと遺言書に書かれている場合です。何もあげないといわれた相続人が、それで納得するなら問題ありません。
無料法律相談で、
「他の子に財産をあげて、私の相続分はない。」
という遺言書を父が作成してしまった、と相談したら、担当の相談員から
「あなたは実の子ではないのだね。」
と、言われたという人がおられますが、その人は実の子なのです。実の子でも、特定の子にはまったく遺産をあげないという例は少なくないと思います。
遺言者が相続について不公平な指定をした場合、法定相続人の期待や生活保障を考慮して、その法定相続人が望むかのであれば、最低限保障しなければならない分が法定されています。つまり、「法定相続人の誰々にはまったく財産をやらない」と書いても、その相続人が了承しない限り必ず遺さなければならない分があり、それを遺留分といいます。遺留分の権利を主張することを「遺留分侵害額請求権の行使」といいます。これは令和元年7月1日から適用されるもので、それ以前の遺留分減殺請求を改訂したものです。
遺留分への配慮
相続のときに遺留分があるのですから、遺言書を作成するときにも、あらかじめ遺留分を考慮しておいた方が、後々の煩雑さが減ります。相続人の誰かにまったくあげないのではなく、最低限でも遺留分相当額は相続させるように遺言しておいた方が、相続人が遺産分割協議で苦労しなくて済みます。ということは、遺言書を作る前に、法定相続人が誰なのか、相続財産がだいたいいくらなのかも確認しておく必要があります。
ただし、まったく遺産をもらえない子が、まったく遺産をもらわなくてよい、という場合もありますから、その点は遺言書を作成するときに十分検討しましょう。
誰が相続人かはわかりそうですが、配偶者に前婚の子・前妻の子・異母兄弟姉妹(前に婚姻関係にあった人との子)がいたり、認知した子がいたりすることを相続人が知らないと、遺産分割協議が一層複雑になります。また、遺言書の中で認知していることもありますのでご注意ください。
兄弟姉妹と遺留分
兄弟姉妹が法定相続人の場合、兄弟姉妹は遺留分の主張ができません。ということは、兄弟姉妹には何もあげないことができます。たとえば、異母(異父)兄弟姉妹には何もあげずに、父母を同じくする兄弟にだけあげる、というようにできます。それは遺言書に書いておかなければなりません。
さらに、もし、その父母を同じくする兄弟姉妹が、遺言者より先に亡くなった場合にはどうするのかも併せて書いておかないと、自動的に異母(異父)兄弟に相続財産がゆくことになります。
遺言書の形式と内容
遺言書が有効であるための条件がいくつかあります。これは決して難しいことではありません。本でもネットでも簡単に情報を得られます。
遺言書はいろいろなことを考慮して書かなければ意味がないといっても過言ではありません。遺言書・遺産分割とは、遺言者が生まれてからの歴史、親・兄弟姉妹たちとの生活を無視して、法の規定だけで収まるものではありません。それをおろそかにしておくと、いざというときに相続人同士で紛糾しかねません。実際、遺言書があるのに遺産相続をめぐって紛糾してしまう例は少なくないのです。【離婚したら遺言書も】もご参照ください。
公正証書遺言にしておけば、形式面では間違いないでしょうが、しかしそれですべて安心ということもありません。相続・遺産分割協議のときにどのような問題が生じる可能性があるか、また、どのように相続人たちが納得するようにするかということは、遺言者ひとりではわからないことがあります。第三者の意見として行政書士などの専門家に相談してみてください。
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